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2006/09/08しかしウィキペディア以外に參加してゐるユーザは五本の指で數へられ

Wikimania 2006 參加者の報吿を聞く會參加記錄

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ウィキマニア2006がボストンで開かれてから一と月過ぎたが、その參加者から報吿を聞かうと有志によつて報吿會が企圖された*1。9月2日、東京都新宿において會は催され、20名ほどの聽眾と2名の發表者、3名の取材者が聚つた*2。報吿者はTietew氏およびTakot氏の二名であり、同じく參加者であつたSuisui氏も參加されて幾度か補足發言をしてをられた。

Tietew氏による報吿はコミュニティや新機能導入を巡るセッションからの報吿が主で、Takot氏の報吿はウィキについての報吿が主であつた。發表後のHill氏からのインタビューでは、さまざまなウィキペディアンが意見を述べてゐた。

Tietew氏による報吿

Tietew氏の報吿は、ローカライゼーション——UIや方針の翻譯、對荒し、WikiData及びWiktionaryZ、Universal Login、Version TaggingひいてはStable Versionからなつてゐた。

第一について、MediaWikiは國際化がきはめて進んでゐるソフトウェアであるので、UIがローカライズし易い一方、プロジェクトのローカライズには、一度翻譯しただけでは濟まないといふ困難さがともなふ。英語版とその他の言語版の差はどうしても生まれるのであり、翻譯などに氣をつけるしかないと述べた。對荒しとしては、irc.wikimedia.orgにて提供せらる更新情報を取得するアプリケーションの利用——IRCにおけるLinky-rcの機能、及びJavaアプリケーションのVandalfighter*3——が紹介せられたが、Linky-rcは夙に有名であり、VandalfighterもLinky-rcと同等の機能で、細かい紹介はなかった。

WikiDataは、WiktionaryZのために開發されたMediaWikiのExtensionであり、ウィキメディア公認プロジェクトではないとしても關はりの深いメンバが開發にあたつてゐる。ウィクショナリの問題點である、同じ語に對し言語ごとに說明や翻譯リストが附されるといふのを言語ごとに別々のところでやつてゐるといふ無駄を解消するために、「辭書は關聯附け」であると觀察し*4RDB*5によつて語とその定義ごと、さらにその定義と他言語における語*6との對應表を入力すると、それと對應する他言語においても同樣の說明が表示されるやうにしてゐる。Tietew氏は、日本語を使用するときのWikiDataの問題點として漢字の讀みを示せないこと*7、UIが全く國際化を考慮してゐないだらうことを擧げられた。日本語話者が參加する必要性を指摘されてゐたが、筆者が日本語版ウィクショナリを見てゐる限りでは、そのやうな動きはない。

その次は、Universal Login或はSingle Sign-onの話題であつた。Wikiaで旣に導入されているこの機能は、ウィキメディア財團のウィキのプロジェクト全てにおいて同じアカウントを使ふやうにする、といふものである。現在は一つ一つのプロジェクト・ウィキにおいてアカウントを取得する必要があり、また、それらはユーザページから相互にリンクを設けて同一人を主張するものであつた*8。一つのプロジェクトにしかないアカウントでない限り、複數のプロジェクトにおいて一人或は複數の利用者が同じアカウント名を所持してゐることになる。それらを統合する過程で鍵となるのがメール・アドレスとパスワードである。特にメール・rアドレスを重要なキーとして、アカウントの同一性が確かめられる。その名前のアカウントがある全プロジェクトのアカウントの利用者が同一でない場合には、現在の方針では、一番投稿數が多いアカウントの利用者が占有權を得る。少ないはうの利用者は改名する必要がある。方針が策定中であり、定まり次第、方針に則り改名される。なほ、Tietew氏によれば、メール・アドレスの登錄がなければ、投稿數が最多であつても保障されないさうである。

最後にStable Version——Version Taggingの話題が報吿された。以前から分野別の出版などで安定版の興味が高かつたとみられる、ドイツ語版を中心に開發されてゐるもので、「一見さん」*9には、「安定版」と指定された版のみを表示する機能である。安定版はテンプレートも展開された狀態で保存され、安定版の指定が變更されない限りずつと同じ內容で表示される。データベース上の最新版は、履歷ページから辿つて見ることができる。これによつて荒し及びキャッシュ率の向上といふ利益があるものの、權限の行使のありかた*10、データベースの壓迫といふ問題をどのやうにするかが難しいと述べ、報吿を了へられた。

Takot氏による報吿

Takot氏の報吿はWikimania 2006だけにとどまらず、Takot氏がその後參加されたオーエンセ*11でのWikiSym 2006の內容も含まれてゐた。ウィキマニアからは曖昧さ囘避、ウィキシムからはAngela Beesleyの基調講演とOpen Spaceなどが取り上げられた。

Wikimania參加者の規模が大きくなつたこと、さまざまな國々から參加者があつたことから報吿ははじめられた。最初の大きな話題は曖昧さ囘避をめぐるものであつた。ウィキにおいては、ページは必ず一意に定まる題名がなければならず、百科事典でときに必要な一つの項目名に對して複數の主題があるといふ問題を解決する手段として曖昧さ囘避は機能してゐる。だから曖昧さ囘避を行ふのにあたつては、どのやうな主題を扱ふのか明らかであるのが望ましく、また、目指す主題へ簡單にアクセスできるやうに*12惡いリンクを避けることも必要である。しかし、一意であることを意識するあまりわかりにくい、すなはち推測しにくい項目名になることがある。たとへば、人物で歿年をつけくはへることがあるが、それはわかりやすいのだらうか。そのやうなことがある一方で、曖昧さ囘避は、書き手が一意に決めつけるURIとは一線を畫して、讀み手のことがかんがへられてをり、正確を求める理想と現實の相違を巧くトレードオフしたシステムであるといへる。またこれは、互いのやりとりといふ點からも轉用が可能で、イントラ・ネットやP2Pのファイル交換の場面での名付けにも曖昧さ囘避の槪念は有用である。

WikiSym 2006の報吿もなされた*13Angela Beesleyの基調講演、“How & Why Wikipedia Works”で、ウィキペディアについてよくいはれる、「ほんたうにウィキペディア百科事典と呼べるのか?」といふ問ひに、百科事典だが、同時にWikiであり、トップ・ダウンに執筆項目が決まるわけではない。だから、ポケモンが一匹ごとに項目となつてゐたり、ハリケーン・カトリーナの項目があつても、ウィキペディア百科事典なのである、と囘答をしたといふことよりはじまつた。

また、ウィキペディアはオンライン百科事典であるとよくいはれる。しかし、オフライン版もあり、ドイツ語版では、DVDまでだされた。出す理由は、收入源として期待するだけではなく、紙のものでないと信用できないといふ人にも使つてもらふためである。ドイツ語版は旣に書かれたものをブラッシュ・アップして作り上げたが、英語版の同樣の計畫では全くなにもないところから進めようとしてゐて、うまく進んでゐないとのことであつた。ウィキペディアはコミュニティである。英語版では、2,025,987ユーザに對し、項目は1,325,275で、これは英語版ウィキペディアの總ページの25%に過ぎず、殘りは、User pageやHelpなどで占められてゐる。

成長も著しい。この五月にも新しい言語版がつくられた。人々はウィキペディア百科事典だと思つてきてゐるので、それに應へる必要もある。そのときに、No Original ResearchやAccuracy、NPOVが重要である。誰かの見榮や自慢を、ではなく、また、Single POVの對極としてNPOVを捕へ、Neutral Pointではなく、Point of Viewに對してNeutralなのだと述べた。また、GFDLに則つたFree Contentなのであるといふこともいはれた。

Wikipedia has a code of conduct, civility, Wikipedia has no firm rulesなども出てきたが、終了時閒が迫つてゐたため手短に濟まされた。最後に報吿されたのは、WikiSymでのOpen Spaceであつた。「カンファレンスに來て一番役に立つたのは退屈なキーノートや發表じゃなくてコーヒーブレークでの雜談だつた」との意見もあるほどで、その場を長く設けてしまはうといふのが趣旨である。カニンガムが、それで、wikiはコミュニティで一つのものを作り上げるので單數で扱ふのだ、といふことを語つてゐた。

質疑應答、インタビュー

質疑應答のために設けられた時閒であつたが、Hill氏からのインタビューといふことに變更された*14。Hill氏からの質問は、ウィキペディアに參加した切缺け、今日なぜこの報吿會に來たか、ウィキペディアでよく編輯する主題は何か、(管理者は執筆する暇がないといふ答へに)なぜそんなに働くのか、25万項目といふことについてどう思ふかといふものであつた。

ウィキペディアでどんな內容を編輯してゐるかといふ問ひに、記事を書くよりも整理をするはうが多い、生物や物理學者を多く書いてゐるなどと答へる參加者がゐた一方で、管理者は執筆する暇がないといふ意見もあつた。それにどうしてそれほどまでにやるのか、と問ふと、Suisui氏が樂しいからだ、と述べた。調べて學ぶこと、そして實際に書くことが樂しいと語ると、ほかの參加者から、ほかの人が書かないとをもしろくない、ほかの誰かの編輯によつて、他人との接點がうまれるといふ意見が出された。Tietew氏は、それに對して、削除依賴やブロックなどの整備によって、コミュニティの仕組みを作つていくのが樂しいのだと述べた。

25万項目達成、といふことについては、分野での充実の濃淡や、秀逸な項目がいまだに70程度にとどまるといふことなどから、いまだ高からずといふ認識が主であつた。また、編輯傾向として、内容を高めていつて完成させるといふことよりも、リストをつくつて、それを埋めていく、コンプリートのはうに熱中してゐる人が多いといふ指摘がなされた。「ウィキペディアはリストではない」といふまとめに失笑がこぼれた。

ウィキペディアの未來、どんなやうになつてほしいか、どんなふうになつてほしくないか、といふものはないか、と聞くと、成果に對しての評價はあるが、コミュニティのメンバの努力への評價ではなく、他の執筆者に對して敬意などが見られない、それは、コミュニティの形成が弱いからだらうといふ指摘がなされた。また、日本語を話すひとは、ほぼ日本に限られ百科事典への欲求が少なく、フリーの百科事典といふより、インターネットで見られる事典といふ意識でしかないので、讀むだけといふユーザが多いのではないか、といふ指摘もあつた、といふところで、時閒がきて、散會となつた。

餘談

遲刻者は、Tietew氏、取材陣含め、少なくなかつた。光畫部時閒ではないやうであつたが。會場においては報吿を靜聽するだけではなく、報吿を進めながらも盛んに質問などがかはされてゐた。その場の雰圍氣をつたへられる筆力のなさを恥ぢいる次第である。また、理解できてゐない部分も少なからずあり、インタビュー時の日英混淆のあの不思議な空閒を描寫する力もない。

Takot氏の報吿は多岐にわたつてをり、このレポートを書くに當り、特に大きく取り上げられたもののみを紹介した。削つたものを、簡單に紹介したいとおもふ。Takot氏はLawrence Lessig敎授のセッションにも參加したやうだが、例のごとく輕快なリズムで流れていく、プレゼンテーションではなくショーのやうな發表だつたさうである。例のごとく、20世紀をリードオンリーカルチャーの著作權に荒らされた世紀と呼び、21世紀は、インターネットによりそれ以前のR/Wカルチャーに戾る、コミケを見よ!といつたさうである*15Ward CunninghamHypercard Stackのときからウィキの素地はあつたと述べ、Wikiによつて新しいコラボレーションのスタイルを經驗するやうになつた、それにかかはれたソフトウェア作者として光榮に思ふと述べたさうである。RMSの腹部の赤ん坊は段々小さくなつていつてゐるさうである*16。Jimboのまはりの記念撮影組はWikitruthの(檢閱)!とにぎはつてゐたやうである。Wikimania 2006のTシャツがあまつてばらまいてゐたやうだつたが、報吿會に景品に持つてくるひともゐなかつた。

二次會

二次會參加率は非常に高く20名ほどで、線路をくぐつて歌舞伎町にある居酒屋へ向つた。そんなわけであるので、當然すんなりとは行かず、數名はぐれてしまつたが、文明の利器であるPHSと携帶電話の威力*17により無事に皆が集ふことができた。元(?)プロレスラーのキラー・カンの店といふらしく、手厚いもてなしにさう參加者同士の會話もなかつた本會とは打つて變り、二次會は大いに盛上つた。取材陣の一人の通譯*18が私の前にゐて、村上春樹が好きですなどといふことを云つてゐた。基本的にかういふ席は外國人の質問に日本人が答へるといふのが常で、今囘もそれをはずれてゐなかつた。WPAのキャラクタでこれは誰です、といふのが非常に流行つた。

三次會

二次會が終つたあと、取材陣が個別インタビューをしたいといふので、Yukichi99氏とSuisui氏、Miya氏およびMiya.m氏をつれて適當な場所を探しに行つてしまつた。まだ20:40分頃であつたので*19、3次會に出る面々を募つて9名が集り、ある居酒屋へ行きお座敷へ案內された。あとから增える豫定であつたため悠々と坐つた。すぐり氏が種々の雜誌媒體にとりあげられたウィキペディアの記事のスクラップを持參してきてをり、皆でそれをみたり、それぞれが書いてゐる分野やウィキペディア全體の話題などに花を咲かせた。

Yukichi99氏*20の日記に精しいが、結局インタビューに行つたひとたちは來ず、11頃に電車の都合もあらうといふので歸ることになつた。JRで一番近い驛にはたどり着くことができたが、その先がないので步いて歸ることになつた。

振り返つて

參加者募集の頃こそ人が集らない、などと書いてゐたが、いざ蓋を開けてみれば部屋一杯に人が入る大盛況であつた。時閒が短くすこし不燃燒氣味であつた本會から、二次會へそのまま向つた面々も非常に多く、さらに物足りない面々は三次會へと繰出し、終電ぎりぎりといふ人が續出した。普段はネットワークを通じて文字だけでしかコミュニケーションしない人々でも、このやうな機會を得てお互ひの生の聲で、生の顏でやりとりをしたいといふ欲求もときにはあるものだらう。また、いまプロジェクトがどうなつてゐて、コミュニティはどのやうにすべきか、といふことを一堂に會して考へるといふ機會ともなつた。それはウィキマニアにおいても重要な意義の一つであつただらう。

もちろん各人には宿題が遺されてゐて、それは各おのの參加の姿勢とともに解決されるべき問題であり、報吿會ではそれが示唆されたのみである。これでよしとせず、今後もこのやうな集まりを持つべきであり、そのはじめの一步として、この會は非常に重要な位置を占めるのに違ひないと考へる。

*1:しかし、その計畫や實務はほぼYukichi99氏によつてになはれた。顯彰のためにも誌しておく。Wikipedia:オフラインミーティング/wikimania報吿會20060902參照のこと。

*2:この3名の取材者は、ウィキペディアのドキュメンタリー映畫を製作してゐるといふN. Hill氏である。[WikiJA-l] Wikimania報吿會20060902開催 2006年 8月 24日 (木) 15:09:48 UTC 參照のこと。

*3http://en.wikipedia.org/wiki/User:Henna/VF

*4:しかし、中閒的な認識を通じて——中閒言語を假構する必要はなからう——翻譯が成立するのであれば、語彙と語彙が關係性によつて說明できるとは限らないのではないか。よく翻譯不可能といはれるものは、多言語での表現不可能性の主張にほかならず、この問題には關係しない。

*5:Relational Data Base. 關係型データベースと譯される。

*6:表現もいちわう關聯づけができるがさうしやすいインターフェイスではないやうだ。

*7:Tietew氏はこれを日本語に固有の問題と考へてをられたが、發音といふ觀點では、相當の言語において問題とならう。ただし、讀み假名は發音を示すものではないから、全く同一とは云へない。

*8:あまりにアカウントが多いユーザはmetaにハブを設けてゐた。

*9:匿名ユーザのことだらうか。

*10:cf. 英語版におけるsysop vandal.

*11:Odense

*12:曖昧さ囘避のページにおいて選ぶ必要がないやうに

*13ACMの分科會に相當するとのことだが詳細は未見

*14:Hill氏の關心は、日本語版ウィキペディアの位置の確認といふのにあつたのだらうか。さういへば彼らは丁度香港でのWikimania Chineseに參加してJimmy Walesにインタビューしてきたところだといふ。

*15:脚色いり

*16:脚色入り

*17:とFaso氏の勘

*18:會社の硏修で淺草にゐたと某夫妻に云つてゐたので、日本だけでの雇はれなのだらう。

*19:ここで私はなぜか20時前後だと思ひこんでゐた

*20http://lab.lolipop.jp/wordpress/?p=189

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